最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)557号 判決 1968年11月15日
上告人
梅鶴メリヤス株式会社
代理人
浜本恒哉
被上告人
末松佐市
代理人
森田照夫
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人浜本恒哉の上告理由一について。
およそ、事件について通常の訴訟委任のほか、控訴の特別委任を受けた第一審訴訟代理人は、当該事件につき、控訴審において附帯控訴をなし、かつ訴を変更して請求の拡張をする訴訟代理権を有するものと解するのを相当とする。本件記録によれば、被上告人は、本件第一審において弁護士森田照夫を訴訟代理人に選任し、同人に対し本件の通常の訴訟委任のほか、控訴、上告等について特別の委任をしたことが明らかである。そして、被上告人が本件第一審係属中死亡したことも、本件記録上窺うことができるけれども、これによつて、右訴訟代理人の訴訟代理権が消滅しないことは民訴法八五条の規定するところである。したがつて、右訴訟代理人は、原審において、所論附帯控訴による請求の拡張をする訴訟代理権を有していたものというべきである。
原判決には所論の違法はなく、論旨はひつきよう独自の見解にもとづき原判決を攻撃するものであつて、採用することができない。
同二について。
所論指摘の事実関係は、原審において上告人の主張しなかつたところであるから、原判決がこれについて何ら判示することがなかつたことに違法の廉はない。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用しがたい。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)